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大型運搬ドローンで人肩運搬を効率化
──山間部現場の新しい運搬手段──

1. はじめに

山間部や中山間地域の現場作業では、重い資材を人が背負って運ぶ「人肩(じんけん)運搬」が今なお広く行われています。特に架線工事や林業・土木作業など、車両の入れない山の上での作業では、人力に頼らざるを得ない状況が多く存在します。

しかし、少子高齢化が進み、現場での人材確保が困難になる中で、ドローンを用いた運搬が“人肩運搬”に代わる現実的な手段として注目を集めています。本記事では、人肩運搬の実態と課題、そしてドローンによる代替の可能性と限界について、現場視点で解説します。

2. 人肩運搬の限界とリスク

かつては歩荷(ぼっか)や強力(ごうりき)と呼ばれる専門職が担っていた運搬作業も、現在では一般作業員が行うケースが大半です。とはいえ、専門職でなければ20kgを超える荷物を背負って山道を歩くこと自体が大きな負担です。林野庁の資料によれば、人肩運搬の一般的な限界は20kg以下、熟練者であっても30kgが上限とされています。

また、最も大きな問題は「安全性」です。登山道ではなく整備されていない作業道を、荷物を背負って何度も往復することは、常に転倒や滑落といったリスクを伴います。特に夏場の熱中症や、濡れた足場での転倒事故など、安全面の課題は深刻です。急傾斜地での苗木運搬などは、作業者の身体的負担とともに継続的な労働災害の温床にもなっています。

3. ドローンによる人肩運搬の代替可能性

ドローン運搬は、苗木や支柱だけでなく、獣害対策資材や鉄塔のメンテナンス用品の運搬にも活用が広がっています。特に山林や中山間地における鹿柵(しかさく)設置作業では、金属パイプやネットなどの重量物を遠距離・高低差のある場所へ運ぶ必要があり、人肩運搬では過大な労力と安全リスクを伴います。ドローンによる空輸は、こうした資材の効率的かつ安全な運搬手段として、林業関係者や電力インフラの保守現場で実際に導入が進んでおり、弊社も多くの案件をサポートしています。特に、ペンキ、碍子、スペーサーなどの鉄塔のメンテナンス用品は、小分けして繰り返し運ぶ必要があるため、ドローンとの相性が非常に相性が良く、実際に弊社の現場でも高頻度で活用しています。

弊社が導入している大型ドローンには、最大積載量55kgの「XYZ55」と、最大30kgの「FlyCart30」の2機種があります。どちらも現場での運用実績が豊富で、それぞれに適した用途があります。

XYZ55は、大型資材の運搬や高低差の大きい現場などで力を発揮する一方、実運用では効率やバッテリー持続性を考慮し、30kg程度に小分けした荷をピストン輸送するケースが一般的です。

一方のFlyCart30は、最大30kgの積載が可能で、20kg程度の荷物を繰り返し運搬する運用に向いています。ウインチ機構の標準装備やGNSSによる高精度ホバリングといった機能により、安全性・操作性に優れており、導入ハードルも比較的低いため、弊社では機体購入を希望されるお客様にはまずFlyCart30をおすすめしています。

また、ドローンの積載量は「大きければ大きいほど良い」というわけではありません。たとえば山の上に荷物を上げた後、資材を現場の作業場所まで人が少しずつ動かす必要がある場面も多く見られます。その際、100kgを超える重量物では取り回しが困難になるため、実用性が下がります。実際には、二人がかりで運べる上限近く、すなわち50〜60kg程度の荷重が最適です。

 

荷重(kg) 飛行安定性 バッテリー消費 再配置のしやすさ
20kg
30kg
55kg
80kg以上 × ×

このように、作業現場の実情に適した積載量を見極めることが、運用効率の鍵となります。

また、ドローン運搬の特徴として、「性別や年齢に左右されにくい作業である」ことも重要です。これまでの人肩運搬は若年層・男性に依存していましたが、ドローンであれば女性や高齢者もオペレーターとして運搬作業に関与でき、担い手確保という面でも有効です。

4. 仕事量で見たときの圧倒的な差

条件にもよりますが、大型ドローン1機でこなせる仕事量は、人肩運搬に換算するとおよそ20〜30人工に相当します。たとえば、作業員が往復1時間かけて荷物を運ぶような山道でも、ドローンであればわずか5分程度で同じ距離を往復することが可能です。

ドローン1機が30人工に相当!

 

■ ドローンと人肩運搬の比較(1回の運搬)

指標 人肩運搬(1人) 大型ドローン(XYZ55)
平均積載重量 約20kg 最大55kg(実用30kg)
往復時間 約60分 約5〜10分
作業者にかかる身体負担 高い なし
安全リスク 高(滑落・転倒) 低(地上作業)

 

現場の実感としても、人的リソースをドローンで補完することは、作業効率と安全性の両立を実現する有効なアプローチであると認識されています。

5. まとめ:担ぐ現場から飛ばす現場へ

ドローンによる運搬は、人肩運搬に完全に取って代わるものではありません。しかし、「重い荷物を安全に、短時間で、繰り返し運ぶ」という点においては、現場の安全性と効率性を飛躍的に向上させる手段です。

また、担い手不足が深刻な現場においては、単なる省力化ではなく、「誰もが担える作業への転換」という意味でも、ドローンは極めて有効な選択肢です。

今後も、ドローンは“人力の代替”というよりは“人力を補完する技術”として、山間部や災害現場での活用が広がっていくでしょう。担ぐ現場から、飛ばす現場へ——現場の未来は、すでに始まっています。

弊社ロジクトロンでは、こうした現場におけるドローン活用の運搬請負のみならず、ドローン導入に向けた包括的なサポートをご提供しています。機体の選定・販売から、オペレーター教育、現場運用設計、保守管理までを一貫して支援することで、初めての導入でも安心してスタートいただけます。

詳しくは、ドローン導入支援サービスのページをご覧ください。ドローンによる運搬は、人肩運搬に完全に取って代わるものではありません。しかし、「重い荷物を安全に、短時間で、繰り返し運ぶ」という点においては、現場の安全性と効率性を飛躍的に向上させる手段です。

また、担い手不足が深刻な現場においては、単なる省力化ではなく、「誰もが担える作業への転換」という意味でも、ドローンは極めて有効な選択肢です。

今後も、ドローンは“人力の代替”というよりは“人力を補完する技術”として、山間部や災害現場での活用が広がっていくでしょう。担ぐ現場から、飛ばす現場へ——現場の未来は、すでに始まっています。

PROFILE

株式会社ロジクトロン
代表取締役 野間智行

2001年 デザイン制作会社にグラフィックデザイナーとして入社
2007年 支社立ち上げの為、上海市に赴任(上海オフィス代表)
2009年 帰国後Web制作会社ディレクターを経て2016年に個人事業開業
2018年 個人事業を法人化し株式会社ロジクトロンを設立
2020年 ドローン事業開始
2023年 一等無人航空機操縦士技能証明を取得