
ドローン運搬の現地オペレーションの一日【運搬編】
- schedule2025年4月12日
- categoryコラム
はじめに:現地オペレーションの実際
今回ご紹介する現場は、埼玉県某所のダム横に位置する山の上。もともとは送電鉄塔が建っていた場所で、撤去後の跡地に苗木を植樹する目的でのドローン運搬が実施されました。
ドローン運搬が注目を集める今、「実際の現場ではどんな動きがあるのか?」という問いは非常に多く寄せられます。そこで今回は、ある日の実際の業務をもとに、ドローンによる荷上げオペレーションの1日を、現場の動きに即してご紹介します。
現場は中山間地域。苗木や作業資材を山の中腹まで空輸するプロジェクトで、限られた時間の中で効率的にピストン輸送を行います。文中にはクライアント側・操縦者側双方の動きが登場し、「どうすればスムーズに運搬ができるのか?」という実践的なヒントも含まれています。
登場人物(5名+作業員)
- Aプロポ操縦者(筆者):離着陸地点での運行・操縦、記録用カメラの操作、飛行記録とバッテリー管理を担当
- Bプロポ操縦者(Mさん):荷下ろし側の操縦担当
- Kさん(クライアント担当者):荷下ろし現場の取りまとめ
- Yさん(クライアント作業員):荷上げ拠点での資材管理
- その他作業員数名(クライアント):苗木の搬入および植樹班
タイムラインで見る「ドローン運搬の1日」
7:30|現地入り・機材展開
天候は晴れ、風は1〜3m/s。現地に到着後、Bプロポ担当のMさんと合流。その後、車両から機体、バッテリー、ワイヤーロープ、自動開閉フック、立入管理用の各種看板などを降ろし、準備に取りかかる。
8:00|朝礼(安全確認・作業内容の共有)
全員が揃ったタイミングで朝礼を実施。作業内容・搬送物・ピストン予定数・注意事項を共有。初めて参加のクライアント作業員にも丁寧にレクチャーを行います。
8:15|荷物のチェック・梱包
クライアント側で資材の並びを整え、我々はバランスや吊り下げ処理を確認しつつ梱包。荷姿により荷重が変わるため、ここで重量を測定します。また、フライトの順番や便数もこの段階で決定します。
8:30|テストフライト
飛行前点検を済ませたあと、A・B両方のプロポで通信の健全性を確認。操縦性やホバリングの安定性、上空の風の状態もチェックする目的でテスト飛行を行います。
9:00|荷受け班の出発

登山道と違い、作業道は整備されていないことも多く、急峻であったり滑りやすかったりと危険な場合があります。
Kさんを先頭に、Bプロポ担当のMさんとクライアント作業員が作業道を徒歩で登っていく。急勾配や不整地が続く険しい道のりであり、このようなルートを人肩で運搬するには相当な負担がかかることが実感される現場です。荷受け場所までは約40分の登山となります。
9:40|荷受け班到着・小休止

ここはもともと鉄塔が建っていました。見晴らしが良いですね。
予定どおり現地に到着。荷下ろし地点の状況を確認し、無線チェックも兼ねてAプロポ側へ現場の様子を報告します。少しの休憩を挟んでフライト準備へ。
9:55|初回フライト
「こちらAプロポ、準備完了」
「こちらBプロポ、着地ポイントOKです」
交信ののち、1便目がゆっくりと上昇。初回フライトでは、離陸地点からは見えない荷下ろし地点に対して、どの方向を狙っていくかを最終確認します。Bプロポへの切り替え後、機体が向かう方向と、帰還時に機体が飛び出してくるポイントを双方で確認し、次回以降に狙うべき場所を確定します。無事に荷下ろしを終え、ピストン輸送を開始。
10:00〜11:02|引き続きフライト
この日は運搬物が少なかったため、8フライトで完了。通常は1日30〜60フライトも可能。約1時間ほどで全ての荷物の運搬が完了しました。
11:15|Bプロポ担当のMさんと道案内役の2名が下山、現地作業継続
荷受け地点での作業を終えたBプロポ担当のMさんと、道案内を担当していた方の2名が下山。クライアント側のその他の作業員は、そのまま現地に残り苗木の植樹作業へ移行されました。離陸地点ではAプロポ担当が撤収作業を開始します。
11:45|Mさんたち合流・撤収作業完了
機体の片付け、バッテリーの仕分け、ログの確認。段取りよく作業を終え、最後に全体の安全確認を実施。
12:15|帰路へ・昼食を兼ねて解散
道中、ご当地の食堂で昼食。昼食後、それぞれの車両に分かれ、現地を後にしました。
おわりに:現場から得られた実感
よく「段取り八分」と言われるように、ドローン運搬においても事前の準備や計画が作業の成否を大きく左右します。現場全体が一連の動きとしてスムーズにつながっていることを、改めて実感した一日でした。1フライトごとの確実な積み重ねと、全員の段取りのよさがあってこそ、安全でスムーズな運搬が成立しています。
この日は荷物が少なかったため、短時間で運搬作業が完了しました。1日30〜60回のフライトが実施される本番運用では、さらに精密な準備と体制が求められます。そのためにも、当日の流れを可視化し、各メンバーの役割と連携ポイントを事前に共有することが重要です。なお、飛行計画の作成手順などについては、別記事で詳しくご紹介する予定です。
次回は、ドローンによる架線工事(パイロットロープの敷設)の一日をご紹介します。
PROFILE

株式会社ロジクトロン
代表取締役 野間智行
2001年 デザイン制作会社にグラフィックデザイナーとして入社
2007年 支社立ち上げの為、上海市に赴任(上海オフィス代表)
2009年 帰国後Web制作会社ディレクターを経て2016年に個人事業開業
2018年 個人事業を法人化し株式会社ロジクトロンを設立
2020年 ドローン事業開始
2023年 一等無人航空機操縦士技能証明を取得