
DJI FlyCart 100発表!FlyCart 30との比較で見る進化ポイント
- schedule2025年7月2日
- categoryコラム
2025年6月30日、DJI Mini 4 Pro(型式認証モデル)の発売を翌日に控えたタイミングで、突如DJI本国から新型大型ドローン「DJI FlyCart 100(フライカート100/FC100)」が発表されました。日本国内への導入はまだ先になりそうですが、公式サイト「DJI FlyCart 100 – 运载无界- DJI 大疆创新」で公開されている情報をもとに、FlyCart 30との違いや進化ポイントを、大型運搬ドローン運用者の視点から解説していきます。
※本記事は日本国内の正式情報公開前に執筆された内容です。今後、情報の更新に応じて適宜修正を行ってまいります。
FlyCart 100 vs FlyCart 30:基本スペック比較
※本比較では、特に気になる主要スペックに絞って抜粋しています。その他の詳細スペックは機体紹介ページでまとめています。
項目 | FC 100 | FC 30 |
---|---|---|
重量 | 55.2 kg(固定長ロープ)/60.2 kg(ウインチモード) | 42.5 kg(バッテリー非搭載時) / 65 kg(DB2000バッテリー2個搭載時) |
ペイロード | 固定長ロープ 80 kg(シングル)/65 kg(デュアル) ウインチモード 75 kg(シングル)/60 kg(デュアル) ※予想 |
40 kg(シングル)/30 kg(デュアル) |
最大離陸重量 | 149.9 kg | 95 kg(貨物含む、海抜高度) |
サイズ | 3220×3224×975 mm(展開時) 1820×1840×975 mm(アーム展開・プロペラ折) 1105×1265×975 mm(折りたたみ時) |
2800×3085×947 mm(展開時) 1590×1900×947 mm(アーム展開・プロペラ折) 1115×760×1027 mm(折りたたみ時) |
ホバリング時間(最大重量) | 12分(デュアル) / 6分(シングル) | 18分(30kg) / 8分(40kg) |
最大航続距離(最大重量) | 12 km(デュアル) / 6 km(シングル) | 16 km(30kg) / 8 km(40kg) |
最大飛行時間(最大重量) | 14分(デュアル) / 7分(シングル) | 18分(30kg) / 9分(40kg) |
動作環境温度 | -20℃~40℃ | -20℃~45℃ |
保護等級 | IP55 | IP55 |
ホバリング精度 | RTK有効:±10 cm RTK無効:水平±60 cm、垂直±30 cm |
RTK有効:±10 cm RTK無効:水平±60 cm、垂直±30 cm(レーダー使用時:±10 cm) |
最大上昇速度 | 5 m/s | 5 m/s(30kg) |
最大下降速度 | 5 m/s | 3 m/s(垂直)、5 m/s(傾斜) |
最大水平速度 | 20 m/s | 20 m/s(30kg) |
最大飛行高度 | 6000 m(離陸高度:4500m) | 6000 m(無積載) |
最大風圧抵抗 | 12 m/s | 12 m/s(30kg) |
LEDライト | 前方・下方 各46W | 有効照射距離10 m/自動点灯(60 Hz) |
映像伝送 | DJI O4、最大20 km(日本10 km) | DJI O3、最大20 km(日本8 km)、AES-256、ADS-B対応 |
パラシュート | 四角形ナイロン製、降下速度≤6 m/s、最低開傘高度100 m | 面積22㎡、開傘1秒、降下速度≤6 m/s、最低開傘高度60 m |
ウインチ | A2EWH-100A、30mケーブル、巻上速度1.2 m/s | A2EWI-30A、20mケーブル、最大荷重40kg、巻上速度0.8 m/s |
バッテリー | DB2160、52V、14.7 kg | DB2000、38 Ah、52.22 V、1984.4 Wh、約11.3 kg |
充電器 | CSX901-12000:最大12000W(三相)/3000W(単相)、9分充電 D14000iE:DC充電出力:42~61.6V/11,500W/AC出力:220V/1,500W、9分充電 ※CC15000はEV車からの給電の為省略 |
CHX101-7000:最大7200W(デュアル)、3600W(シングル) |
送信機 | DJI RC Plus 2、7インチLCD | DJI RC Plus、7インチLCD、GNSS、防塵防滴、HDMI出力 |
進化した換装システム:ウインチ&固定ロープモード
FlyCart 30に搭載されていたカーゴモードは廃止され、FlyCart 100では吊り下げ運搬を基本とした設計に一本化されています。2種類のモードが選択可能で、ひとつは固定長のロープを使用するモード、もうひとつは約5kgの追加重量が発生するものの、進化したウインチを搭載するモードです。
ウインチモードでは、FC30で評価が分かれた機械式フック(荷重が抜けると開放されるタイプ)に代わり、リモコン制御で開閉できる電動フックが採用されています。なお、固定ロープ使用時にも計量機能や切り離し機能が標準で搭載されています。
ワンタッチ換装で現場対応力アップ

クイックスタートガイドより抜粋
換装の容易さもFlyCart 100の魅力のひとつです。基本的にはウインチモードが推奨されますが、上下動による荷下ろしが可能な現場では、軽量な固定ロープ+機械式フックの運用も十分現実的です。脚部パーツごとの交換が必要になるため、用途に応じて換装セットを別途用意しておくのが良いかもしれません。
ウインチの巻き上げ速度もFC30の1.5倍に向上し、1.2m/sとなっています。現場の効率化に貢献する大きなポイントです。
ハイエースに収まるポータビリティ
収納時サイズは縦1105mm×横1265mmと、FC30よりやや幅広ではあるものの、ハイエースに無理なく搭載できるサイズ感を維持。最大離陸重量149.9kgの大型機でありながら、輸送性も確保されている点は大きな利点です。
機体重量は約60kgとFC30より20kgほど重くなっています。積み下ろしにはスロープやリフターなどの補助機器を用意するのが現実的でしょう。
夜間飛行対応を強化したLEDライト
公式サイトにある動画を見てもらえればわかりますが、前方照明に加え下方向のLEDライトが追加され、視認性が大幅に向上しています。これはレベル3.5に対応した夜間運航を視野に入れて設計されていると見て間違いありません。
弊社でも夜間×危険物に対応したレベル3.5飛行の申請講座を8月または9月に開催予定です。導入を検討している事業者様はぜひご参加ください。
プロポと映像伝送技術の進化
通信規格はO3からO4へと進化し、伝送距離もわずかに延伸されました(ただし日本の山間部や森林環境では恩恵は限定的かもしれません)。送信機はDJI RC Plus 2が採用され、DeliveryHUBを用いた複数機体の統合管理が視野に入ります。
このあたりの活用には相応の資本力が求められるため、導入の可否は慎重な判断が必要です。
専用発電機と高速充電システム
大型ドローン運用最大の問題はバッテリーローテーションです。DJIもそのあたりは十分認識されているようで、今回なんと専用発電機が同時発売されます。ガソリン30L入るもので、最大効率だと残量30% から95%に達するまでわずか9分ということです。FC30のインテリジェント バッテリーステーションも200V急速充電が可能ですが、正直日本の環境で最大出力で充電(運用)するの難しかったので、いっそ専用発電機で運用するっていうのは目からウロコのナイスアイデアだと思います。バッテリーは重くなり約15kgです。腰痛注意。
なお、デュアルバッテリーで飛行する場合は機体の両脇に抱え込むスタイルとなります。シングルバッテリーの場合、左右どちらかに15kgのバッテリーが収まるわけで、バランス悪そうですね。基本的にデュアルバッテリーで運用すべきだと思います。
バッテリーが機体の左右しかも下部にぶら下げるような形で配置されてます。これ地味に重要で、低重心化によって、離着陸時の安定性がよくなっていると思います。
あとはバッテリー保管ケースがありますね。これで段ボールから開放されますw
FlyCart 100の価格とコスト感
現地中国での販売価格は、「旗舰套装 – 充电站版(フラッグシップセット・充電ステーション付)」で119,999元(約260万円前後/2025年7月時点)。ウインチや発電機を含んだ運用想定の構成と考えられます。
国内価格は未発表ですが、輸入コスト・認証費用を含めると300万円を超える可能性もあります。さらに、バッテリーは1セット2本ではまともに運用できませんので、実運用には追加で2セット(計4本)程度の購入が必要です。(できれば全体で5セットは用意したいですね)
これにより総額は大きくなりますが、それでもFlyCart 30の同等構成と比べて性能差を踏まえると、価格差は抑えられているようにも見えます。導入コストに対する納得感は十分にあり、費用対効果の高い選択肢といえるでしょう。
【結論】FlyCart 100は買いか?
FlyCart 100は、大型運搬ドローン市場において極めて魅力的な製品です。新規導入を検討している企業にとっては、間違いなく「買い」の一台といえるでしょう。
一方で、すでにFlyCart 30を導入済みの事業者にとっては、FC100でなければ対応できない特別な与件がない限り、急いで入れ替える必要はないと思います。FC30も依然として高性能な機体であり、今後もしばらく現場での主力として活躍できるはずです。FC100の型式認証取得の動きも気になります。
今後、国内展開や認証情報、販売価格などの続報に注目しつつ、自社の運用体制や荷物特性に合わせた最適な選択を進めていきましょう。
PROFILE

株式会社ロジクトロン
代表取締役 野間智行
2001年 デザイン制作会社にグラフィックデザイナーとして入社
2007年 支社立ち上げの為、上海市に赴任(上海オフィス代表)
2009年 帰国後Web制作会社ディレクターを経て2016年に個人事業開業
2018年 個人事業を法人化し株式会社ロジクトロンを設立
2020年 ドローン事業開始
2023年 一等無人航空機操縦士技能証明を取得