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大型運搬ドローンの活用。ドローン空輸の新時代と最新技術

  • schedule2025年3月28日
  • category事例

1. はじめに

近年、大型ドローンが運搬・物流分野において急速に注目を集めています。特に、物流業界やインフラ業界では、従来の輸送手段では対応が難しかった場面での活躍が期待されています。これまでの空輸手段と比べて、ドローンはより低コストかつ迅速な輸送を実現できる可能性を秘めています。

特に昨年、DJI社より発売された「DJI FlyCart 30」は、従来の大型ドローンでは実現が難しかった30kgの荷物の上下が可能なウインチを搭載し、荷物の揺れを機体側で制御する機能や、GNSS(GPS)による高精度ホバリング、詳細なプログラム飛行が可能な点など、国産機を圧倒する性能を誇ります。この革新により、多くの新規事業者の参入が促進されました。

本記事では、大型ドローンの運搬用途と技術的特徴、さらには課題と今後の展望について解説します。

2. 大型ドローンの運搬用途と活用事例

2.1 災害時の物資輸送

能登半島地震のような大規模な自然災害が発生すると、地上の交通網が寸断されることが多くあります。そのような状況下で、大型ドローンは緊急物資の輸送において重要な役割を果たします。医薬品、水、食料、発電機などを迅速に孤立地域へ届けることが可能です。

緊急用務空域の指定や複数機関との連携など、実際の運用には課題もありますが、今後の大規模災害時には全国から集結したFlyCart 30が活躍することが想像されます。

弊社では、災害時における大型ドローン運用のガイドライン作成も行っています。外部機関との調整に加え、自治体職員の方に運用方法をご理解いただくための資料作成や訓練支援も行っており、この内容については別記事で詳しくご紹介する予定です。

2.2 インフラ工事の支援(架線工事など)

電力・通信インフラの整備においても、大型ドローンの活用が進んでいます。特に、架線工事においては、従来のヘリコプターや地上作業に比べ、大幅なコスト削減と安全性向上を実現できます。

日本では高度経済成長期の1970年代に多くの送電鉄塔が建設されました。2020年代に入り、それらの建替え需要がピークを迎えています。しかし、当時は田園だった場所が現在では住宅地となっており、ヘリコプターの使用が困難、あるいは高所作業車の進入が不可能なケースもあります。ドローンであれば、こうした制約のある環境でも安全に作業を進めることが可能です。

また、中山間地域における送電線建設・メンテナンスの現場では、碍子やスペーサー、塗料などのメンテナンス資材の運搬にも活用されており、工期短縮やコスト削減に大きく貢献しています。

2.3 遠隔地・山岳地帯への物資輸送

山間部や離島では、人手不足や交通インフラの脆弱さから、従来の輸送手段に限界が見られます。大型ドローンを活用することで、短時間で必要な資材や生活物資を届ける「物流ドローン」の可能性が注目されています。

コスト面での課題は依然として残るものの、これまでの実証実験で得られた知見は、災害発生時におけるドローン運用計画の基盤として大いに役立っています。

2.4 産業用途(建設資材・機材の輸送)

中山間地域などの土木・建設現場では、重機の導入が難しい環境で資材を運搬する必要がある場合があります。大型ドローンを活用することで、建材や工具を迅速に搬送でき、作業効率の向上が期待されます。

3. 運搬用大型ドローンの技術と特徴

3.1 ペイロード(積載可能重量)と飛行距離

弊社のXYZ55をはじめとした大型ドローンの大きな特長は、高いペイロード性能にあります。現在の市場では、数十kgから80kg以上の積載が可能な機体も登場していますが、実際にはそのような重量を頻繁に運搬する現場は少なく、需要は限定的です。

また、飛行距離については、多くの現場で1km以内に収まることが一般的です。弊社では、1km未満の範囲にはペイロード55kgのXYZ55を、1km以上またはウインチが必要な現場にはFlyCart 30を使用するなど、現場に応じた柔軟な運用を行っています。FlyCart 30であれば、片道2km程度のピストン輸送も効率的に実施可能です。

3.2 バッテリー・動力源(電動・ハイブリッド・水素燃料)

従来のドローンは主にリチウムイオンバッテリーを搭載していますが、大型ドローンでは今後、ハイブリッドエンジンや水素燃料を採用した機体の登場が期待されています。長距離飛行や運搬量のさらなる拡張を求める場面では、VTOL(垂直離着陸機)タイプのドローンが選択肢として現実味を帯びてきています。

一方で、弊社のように近距離ピストン輸送を主とする運用においては、バッテリー性能が現在よりも5〜6割向上すれば、現状の課題はほぼ解消されると考えています。実際、弊社では5セット程度のバッテリーがあれば大半の現場をカバーできており、2km程度の距離や高度差のある現場にも柔軟に対応しています。

3.3 自律飛行・遠隔操縦技術の進化

近年、自律飛行技術や遠隔操縦技術が著しく進化しています。LTE通信を用いた操作や、各種センサーによる障害物回避などにより、より高精度で安全な運搬が実現しています。

将来的には、衛星通信の活用によって地上設備に依存せず、全国各地での遠隔操作が可能になると見込まれています。

4. 運搬ドローンの導入に向けた課題と展望

4.1 現行法規制と飛行許可

日本国内においては、大型ドローンの飛行に関して厳格な法規制が存在します。特に、ペイロードが大きい機体については、航空法や関連法令の適用を受け、慎重な運用が求められます。

DID地区(人口集中地区)での飛行には許可が必要ですが、許可を取得していても、実際の運用が難しいケースも少なくありません。弊社では、DID地区での多数の運用実績を持ち、安全面の確保はもちろん、飛行計画の策定や申請・承認業務も一貫して対応しています。

4.2 天候・安全性の確保

ドローン運搬においては、天候の影響が大きな課題です。強風や豪雨の際には飛行が困難となるため、事前の天候予測と柔軟な対応が求められます。

しかし、FlyCart 30の登場により、状況は大きく改善されました。−20℃〜40℃の耐候性、12m/sの耐風性能、防水仕様などにより、機体性能を理由とした運航中止は減少し、むしろ現場作業員の安全確保のための運休が主な判断要因となっています。

ただし、7〜8m/sの強風下では、離着陸や荷下ろしの安定性に不安が残るため、安全第一の観点から作業延期が現実的な選択肢となります。

また、荷物の固定方法や衝突回避技術のさらなる向上も求められており、これらの技術については別記事で詳述する予定です。

5. まとめ:運搬用大型ドローンが拓く未来

大型ドローンは、災害時の物資輸送、インフラ工事の支援、遠隔地への物資輸送といった多様な分野での活躍が見込まれています。

現在は技術的・法規制上の課題もありますが、今後のバッテリー性能やペイロード能力の向上により、導入はさらに加速すると考えられます。企業や自治体にとっても、輸送手段の多様化はコスト削減や作業効率向上だけでなく、山間部での人力運搬における事故抑止や安全確保といった面でも大きなメリットをもたらします。

今後も、実践的なノウハウの蓄積と技術革新の進展により、運搬用ドローンの社会実装はより現実的なものとなるでしょう。

 

PROFILE

株式会社ロジクトロン
代表取締役 野間智行

2001年 デザイン制作会社にグラフィックデザイナーとして入社
2007年 支社立ち上げの為、上海市に赴任(上海オフィス代表)
2009年 帰国後Web制作会社ディレクターを経て2016年に個人事業開業
2018年 個人事業を法人化し株式会社ロジクトロンを設立
2020年 ドローン事業開始
2023年 一等無人航空機操縦士技能証明を取得