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【DJI FlyCart 100】FlyCart 30と何が違う?運用目線で読み解く最新大型ドローン

2025年12月4日21時、日本語公式サイトにて大型ドローン「DJI FlyCart 100(FC100)」の情報が正式に公開され、国内のドローン業界では注目度が一気に高まっています。この記事は、その公式発表を受けて早速まとめたもので、FlyCart 30との進化点や現場での運用視点をもとに、最新機体の特徴を多角的に解説します。

🔗 DJI公式 日本語サイト(FlyCart 100製品ページ)
🔗 第1回レビュー記事はこちら:DJI FlyCart 100発表!FlyCart 30との比較で見る進化ポイント(比較一覧表あり)

※本記事は日本国内での正式発表直後に執筆されたものであり、今後の追加情報に応じて適宜内容を更新します。

圧倒的存在感:FlyCart 100の“スケール”

一言で表すなら「デカい!」。FlyCart 30と比較して“ひとまわり”どころか“ふたまわり”大きく、設置面積はいわゆる四畳半(約7㎡)の部屋を優に超える約10㎡に達します。感覚的には、小さめの会議室や保健室が丸々ひとつ必要なイメージ。これだけで、どれほどのサイズか伝わるはずです。

四畳半の和室でFC100を展開して途方に暮れる成人男性

 

FC30が縦長だったのに対し、FC100はわずかに横長な設計となっており、これがさらに大きさを強調しています。

あまりにもデカいFC100ですが、収納時はちゃんとハイエース等商用バンに収まるので安心してください。ちょうどタイヤスペースを避けるような構造になっています。

ホットスワップはデュアルだけ:シングルバッテリー時は電源オフ必須

左:シングル時は機体の頭に直挿し 右:デュアル時は機体左右のBOXに格納

 

FlyCart 100は、デュアルバッテリー構成時にのみホットスワップ(热插拔)に対応しています。

どういうわけか、日本語版マニュアルにはホットスワップに関する記述が見当たりませんが、中国語マニュアルには以下のように明記されています。

单电模式下,在将电池安装或者拔出于飞行器之前,请保持电池的电源关闭,请勿在电源打开的状态下拔插电池,否则可能损坏电源接口。双电模式下支持电池热插拔。

【訳】シングルバッテリーモードでは、バッテリーの装着や取り外しを行う前に、バッテリーの電源をオフにしてください。電源オンのまま抜き差しすると、電源端子を損傷する恐れがあります。デュアルバッテリーモードではホットスワップに対応しています。

これはFC30とは異なる仕様であり、現場での運用時には特に意識しておくべき重要な違いです。

運用性と導線:人数と車両のバランスがカギ

FlyCart 100は、単体ではハイエース等商用バンに積載可能です。ただし、専用の発電機付き充電器や予備バッテリー、工具などを同時に積もうとすると、1台の車に人員を含めてすべてを載せるのは現実的ではありません。実際の運用では車両を2台用意し、ピックアップトラックなどに発電機を積み、ハイエース等商用バンには機体とオペレーターを乗せる運用体制が理想です。

この構成を前提にすると、最低4人の体制が必要となり、FlyCart 30のように3人で小回りよく運用することは難しくなります。人数と車両台数の関係をふまえ、どの機体が現場に適しているかを検討することが重要です。

現場ではバッテリー交換の導線に注意が必要で、左右から人が進入する導線を確保するレイアウトが望ましいです。機体が大きいのもそうですが、バッテリー取り付け位置が左右に別れているので一人で2個のバッテリーを運んでも機体を半周する羽目になり、時間と体力をロスします。ドローンの飛行速度による効率化はわずかなものです。運搬サイクルを早める為、最も重要なのはバッテリーローテーションも含めたピット作業です。

一人でバッテリー交換をしようとすると機体の反対側にまわるのが大変。兼務ができたとしてもスムーズな運行には最低4人は必要です。

飛行現場の適性:林道は厳しく、土木現場・都市部建設現場に適正あり

FlyCart 100のサイズでは、林道や狭小地での離着陸は難しく、もっと広いスペースが必要です。10m四方で空が開けていると安心でしょう。

鉄塔工事のように構造物が接近している環境では、FC30のような小型機の方が優れています。一方で、大型ダンプが行き交うような土木現場や造成地、駐車場スペースのある都市部の建設現場ではその真価を発揮します。広い離着陸エリアが確保できることに加え、クレーンを動かすまでもない数十キロ級の資材をピンポイントで揚重できるのは大きな利点です。

また、FlyCart 100で地上から山上のベースキャンプへ物資を上げ、そこからFC30で現場各所に分配する「リレー輸送」体制を構築すれば、運搬効率の大幅な向上が見込まれます。

運用インフラと番号表示:現場で気になる周辺ポイント

  • 発電機2台 vs バッテリー追加: 運用戦略として、発電機を2台持ち運ぶよりも、バッテリーセットを追加しつつ1台の発電機で回す方が現実的かもしれません。現地ではトラックの荷台でそのまま充電できる体制が理想です。
  • 登録記号の貼り場所が…ない?: 機体デザインがシンプルに研ぎ澄まされすぎていて、いざ登録番号(25mm以上のフォント)を貼ろうと思っても「ここだ!」という平面が意外と見つかりません。法令上はしっかり貼る必要がありますが、どこに貼るか悩ましいのが正直なところ。細長いラベルや長体フォントで工夫することになりそうです。

FC100とFC30、どちらを選ぶ?現場ごとの最適解を探る

FlyCart 100は、その圧倒的な積載力・航続性能・運用システムを武器に、次世代の重量物ドローン輸送の主役となることは間違いありません。

初めて大型ドローンを導入する事業者にとっては、総合パッケージでの運用設計がしやすく、「最初の1台」として非常に有力です。

一方、すでにFlyCart 30を導入済みの企業にとっては、すぐに買い替える必要はありません。FC30は今でも優秀な機体であり、FC100でなければこなせない与件が明確でない限り、様子を見つつ必要に応じて導入するのが賢明です。

また、FC100の運用には最低4人が必要な一方で、FC30は3人でも効率的に運用でき、1台の車で現場に行くことも可能です。つまり、FC30は車1台・3人で完結できる小回りの良さが強みであるのに対し、FC100は車2台・4人以上体制での大型運用が求められる機体です。

このように、車両台数・人員構成・現場条件をふまえた適材適所の使い分けが、両者の真価を最大限に引き出すポイントになります。

FlyCart 100をどう活用するかは、現場と運用チームの工夫次第。最新情報を活かしながら、導入のタイミングを戦略的に見極めていきましょう。

🔗 第1回レビュー記事はこちら:DJI FlyCart 100発表!FlyCart 30との比較で見る進化ポイント(比較一覧表あり)

PROFILE

株式会社ロジクトロン
代表取締役 野間智行

2001年 デザイン制作会社にグラフィックデザイナーとして入社
2007年 支社立ち上げの為、上海市に赴任(上海オフィス代表)
2009年 帰国後Web制作会社ディレクターを経て2016年に個人事業開業
2018年 個人事業を法人化し株式会社ロジクトロンを設立
2020年 ドローン事業開始
2023年 一等無人航空機操縦士技能証明を取得